さまざまな理由で学校に通えない小中学生をケアしようと学校を起点に子供や保護者の心理的なサポートを担う「スクールカウンセラー(SC)」の配置が全国の自治体で広がっている。一方で、令和2年度の不登校の児童生徒の数が19万6127人と過去最多となり、SCの増加が不登校の減少に必ずしもつながっていない。財務省も国の事業の改善点を探る調査でSCの資質向上の必要性を指摘するなど、SCの制度自体の改善を求める声も上がる。
文部科学省は平成7年度からSCの配置を始め、その職務を「不登校や、いじめなどの問題行動の未然防止、早期発見および対応」などとした。配置件数はほぼ毎年増え、令和2年度に計画された配置は3万件超。一方、同省の調査では不登校の小中学生は平成24年度から毎年増え続けている。
不登校増加の背景には、無理をして登校しないことも選択肢の一つと捉える社会認識の変化もある。だが、いじめの認知件数も25年度から令和元年度まで毎年増加。2年度は減少したが、新型コロナウイルスによる休校などが要因とみられ、SCの配置の成果に疑問符がつく状況にある。
文科省は「個別に見れば、SCのサポートで不登校から学校に復帰した例もある」と評価。一方で、ほとんどの自治体では1校あたりのSCの勤務日が週1日以下のためきめ細かな対応が難しいとし、SCの人数や勤務日数を増やしたい考えだ。
だが、SCが常駐して常に子供たちを見守り、保護者にアドバイスできる環境があれば不登校の防止につながるとはかぎらない。全国で唯一、SCを全市立中学に常駐させる名古屋市では、段階的にSCの常駐配置を始めた26年度から、不登校の生徒が毎年増え続けているのが実情だ。
■専門資格の創設 検討が必要
元中央教育審議会副会長の梶田叡一氏(心理学・教育研究)は「SCという固有の資格の創設を検討する必要もある」と指摘する。
SCに特化した国家資格はないが、臨床心理士の資格を持っているケースが多い。一方で、梶田氏は「臨床心理士とSCとでは必要な技能が異なるということが理解されていない」と話す。
臨床心理士が医療機関などで担うカウンセリングでは、相談者の話を傾聴してアドバイスはしないのが一般的。一方で文部科学省はSCに対し、児童生徒にカウンセリングを行い、保護者に問題解決に向けた助言をするよう求めているが、話を聞くだけで助言しないSCが目立つという。
2年前の夏、当時中学1年だった長女(14)が体調不良を訴えて学校に行かなくなった愛知県の女性(53)は、SCと半年間、週1回の面談を続けた。だがSCは毎回、「本人が登校する気になるのを待つしかない」と繰り返すだけで、「何をして待てばいいのかも分からなかった」と振り返る。
焦った女性は、再登校を支援する民間の専門家を頼った。そこでは学習のつまずきが原因と判断され、長女は算数の復習や生活リズムの改善などに取り組み、3学期から学校に通えるようになった。今も明るい様子で登校しているという。
30年以上にわたり不登校の児童生徒の復帰を支援する明治学院大の小野昌彦教授(教育臨床心理学)は「SCの人数は増えたが、専門性の低い人も多い」と感じている。保護者がSCを頼り、面談を重ねても具体的な分析やアドバイスもなく、やがて子供が完全な不登校になる-。そんなケースが後を絶たないという。
こうした状況の背景には、SCの養成体制の脆弱さがある。SCに特化した養成は行われておらず、各自治体が採用後に開く研修会は講演会などが多いため、実践的な指導法を学ぶのは難しいのが現状だ。梶田氏は「SCになる前に大学などで履修する専門的なカリキュラムをつくることも必要ではないか」としている。
ここ2年半、不登校はコロナの影響で増えたともいえるが、それにしても学校に週1回の勤務でカウンセリングによって不登校を減少させるのは難しい。
子どもたちの学校での様子や家庭での様子を週1日の勤務では把握できないし連携も難しい。SCは担任や教育相談部などの他の教員との連携が大切だ。さらにSCの専門性を生かすなら、SSWや通級指導担当養護教諭、特別支援コーディネーター、特別支援員などとの連携や会議が必要だ。そうすることで一人の生徒を多面的にみることができるからだ。
従って、最低でも週1勤務にプラスして、忙しい教員が授業を終える2時あたりから6時ごろまで出勤する日をもう1日作るべきだ。
また、専門性だが、WISCや読み書きスクリーニング検査などの知識があるのか疑問に思う時がある。発達について専門的でなければ現在の教育課題に対応できないのではないか。