公立学校の真実
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「つなみのせいで、大川小学校のわたしのおともだちはみんなしんでしまいました。じえいたいさんががんばってくれているので、わたしもがんばります」
津波で児童の約7割が死亡・行方不明となった宮城県石巻市の大川小学校。壮絶な環境のなかで、懸命に捜索を続ける陸上自衛隊14旅団(香川県善通寺市)の隊員は同校の児童とみられる女児からこんな手紙を受け取った。動物のイラストが描かれた一枚の便せんに「日本をたすけてください。いつもおうえんしています。じえいたいさんありがとう」とあった。
国民を守る最後の砦、自衛隊員の献身的な姿には、全国から称賛が集まった。
だが、「教科書」に描かれる「自衛隊」は相変わらずさんざんだ。全国シェア60%超で中学校で最も使われている「東京書籍」の教科書から引用してみる。
《平和や安全を守るためであっても、武器を持たないというのが日本国憲法の立場ではなかったのかという意見があります》
《自衛隊の任務の拡大は、世界平和と軍縮を率先してうったえるべき日本の立場にふさわしくないという声がある》
検定合格し、来春から全国の中学校で使われる教科書の現実だ。生徒は存在への疑問符をまず学び、防衛協力なども日本として「ふさわしくない」と教わる。災害支援は全く触れず「国家の安全保障」でなく「人間の安全保障」と説く記述もある。
《従来の『安全保障』は(略)国家の軍事力による『国家の安全保障』でした。しかし、(略)国家の安全保障だけでは人々の安全と平和を確保できない場合もみられ(略)そこで、人間一人ひとりに着目し、その生命や人権を大切にすべきだという『人間の安全保障』という考え方が出されています》
しかし、被災者の救出に精を出したのは紛れもなく「国家の安全保障」を担う自衛隊だった。
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「せめて写真だけでも…」。10日に行われた福島県川内村の一時帰宅。防護服を着てわずか2時間わが家に戻った被災者たちはこぞって写真やアルバムを持ち出した。家族の絆がどれほど大切か。そう実感した被災者は多かった。
家族もまた、学校教育では個人の生き方を制約する存在としてないがしろにされた。公民の「家族」はかつて全教科書が扱ったが、今は半分程度に。国会では家族や結婚制度を崩壊させると危惧される選択的夫婦別姓が進められ「家族を解体する動き」と批判を浴びている。
「関東を離れるように」。3月13日、フランス大使館が在日フランス人に避難勧告を出すと、首都圏のフランス人約6千人の半数以上が帰国、避難した。米国や中国、インドも追随。東京の大使館を閉じた国は一時30カ国を超え、街から外国人が消えた。
自国民の保護は国家の役割だ。国民は国家に従って行動する。しかし、教科書は「日本国民」としての視座を遠ざけ「地球市民」の意識が大切と説く。
《私たちは日本国民としての意識だけでなく地球に生きる人間(地球市民)としての意識を持つことが求められています》
国政では国民の意思決定である地方政治の選挙に外国人を加える動きがあり、批判を浴びている。国や国家へのまなざしが強まるなか、教科書のナイーブな記述に違和感は際だつばかりだ。
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「震災で学校の空気は明らかに『周囲が私に何をしてくれるか』という権利者の意識から『自分が周囲に何ができるか』へと変わった気がする」
全日教連元委員長で山口県柳井市の大畠中学校社会科教諭、三好祐司はこう話す。
「私たちが当たり前に手にできた暮らし。その多くはたくさんの人の支えで初めて手にできたものばかりだ。いかにもろく、そしてありがたいか。考えてほしい」
震災直後に生徒にまずこう語りかけた。被災地から離れていても真剣に耳を傾ける生徒に三好は「生徒はすでにたくさんのことを感じ、考え、人のためになりたいと感じた」という。
都内のある教育長は都教委が宮城県の学校に教員派遣を即座に決めたことに驚いた。「教員はとかく権利意識が強い世界。組合はもちろん、校長も自分の学校運営へマイナスを恐れ消極的になりがちなのに、こんなに即座に決まるとは…」
不平や権利は語っても、自分にできることには腰が重い。頑迷で横並び意識が強い教育界の病にも震災は小さな風穴を開けつつあるようだ。
三好は原子力発電所の事故対応に奔走した自衛隊などの献身的な姿を正面から取り上げるつもりだ。「震災は悲しい出来事だった。しかし、日本人としての健全な国家観や愛国心を培い、家族の絆の大切さを実感する機会もまた多かった。私たちは震災を通じて考える課題を与えられた気がする」