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N太は教室に入らない。入っても暴言、暴力で授業にならない。外では、夜中に暴走し、翌日は家に帰らない。担任である私は指導困難な状況を抱えていた。

その日も、私やM先生に手を出し、どのように指導していくべきか迷っていた。もう、一律な指導をやっても意味がないと感じていたので、M先生と話しあい、親に会う前に本人と語ろうと決めた。どこでどう語るのか、2人が考えたのはファミレスだった。そして、N太の携帯に連絡し、車に乗せた。その時、「先生、おれはMやK嫌いやないねん」。私とM先生は、N太のこの言葉が出た瞬間に胸のつっかえが取れ、指導のほとんどは終わったと直感した。

それから、N太は教師に暴力をふるわなくなった。この時から、指導とは何かと深く考えた。考えたことは2つある。

①型にはまった指導。例えば、暴力はすぐ親引き取り、喫煙は親呼び出し。これらは、当然だが、指導する側とされる側の信頼関係があっての話である。まずは親との信頼関係を構築するために入学当初に先手を打つ。

②信頼関係を構築するにあたり大切なのは、指導する側の動機だ。指導は、生徒を抑えて言うことをきかせる、という観点に陥りやすい。しかし、その時は良くても、禍根を残す。つまり、指導になっていないのである。一方、信じて伸ばす、を動機として指導すれば、ゆっくりだが最後に親や生徒から信頼され、良い方へ向かう。

指導とは、生徒を励ますこと。生徒も私も失敗を繰り返す弱い人間。なんとか生きている。

同じ人間として、励ましてやりたい。だが、生徒を励ますといいつつ、実は自分を励ましている。そして、自分を励ましていると言いつつ、真実は、生徒から励まされている。

指導とは、生徒から元気をもらうこと。生徒から教えてもらうこと。N太よ本当にありがとう。


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