教員を育てるのは教員という視点

(提供:Benesse教育情報サイト)より


教員の質を向上させることは、保護者や子どもにとっても大きな課題であり、願いでもあります。文部科学省の中央教育審議会では、現在、教員の資質能力の向上策を審議していますが、いまひとつ決め手に欠けるのが実情のようです。そのようななかで、国立教育政策研究所(外部のPDFにリンク)は、優秀な教員はどうやって生まれたのかを調べた結果を発表しました。さて、優秀な教員を育てるために必要なものとは、何なのでしょうか。

調査は、2010(平成22)年2月から3月にかけて、「優秀教員」として都道府県・政令指定都市の教育委員会が推薦した教員を対象に実施し、223人から回答を得ました。

まず、教職を志したきっかけを聞いたところ、

1位が「教師との出会い」

2位が「大学や学部の選択」

3位が「家族の影響」の順でした。

さらに、教職を目指した理由は、

1位が「仕事のやりがい」

2位が「教えるのが好き」

3位が「教師へのあこがれ」

となっています。優秀教員には、学校時代に尊敬できる教員に出会い、子どもの教育という仕事に、単なるあこがれよりもやりがいを求めた人間が多い、と言えそうです。

また、教員としての自分に影響を与えた学校時代の経験は、小学校から高校をとおして1位が「教師の人柄」であり、大学時代でも1位が「教育実習先で出会った教師」でした。優秀教員にとって、良い教員との出会いは常に不可欠なようです。

教員になってから影響を受けた経験を聞いたところ、大学院などでの長期研修を除けば、1位と2位に挙げられた経験は、教職5年未満までは「学校内での優秀な教員との出会い」「学校外での優秀な教員との出会い」、教職5年以上では「学校外での優秀な教員との出会い」「学校内での優秀な教員との出会い」でした。新採のころは学校内の先輩教員、ある程度経験を積んでからは他の学校の教員との出会いが、大きな影響を及ぼしたようです。

教員生活全体を振り返った場合の影響を受けた経験では、

1位が「学校内での優秀な教員との出会い」40.4%

2位が「学校外での優秀な教員との出会い」15.2%

3位が「教科等の研究会での活動」7.2%

4位が「学校内での授業研究」6.7%

5位が「在任校の研究指定」4.9%

などの順で、圧倒的に同じ学校の中で、先輩教員などから影響を受けた割合が高いことがわかります。

教員の質の向上のために、教員養成課程の改善や研修の充実などは、もちろん重要です。しかし、先輩・後輩や同僚同士が良好なコミュニケーションを取りながら互いに高め合う環境から、優秀な教員が生まれるという事実を見落としてはなりません。

教員に対する社会の目は厳しくなる一方ですが、教員間のコミュニケーションさえ満足に取れないほどの多忙化は、教員全体の質の低下につながるかもしれません。人間が人間を教える教育という仕事において、その教員を育てるのも教員であるという視点も、必要なのではないでしょうか。

 

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2011/07/26 04:50 | Comments(4) | TrackBack() | 教員の質

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コメント

公立中学校の学校格差を問題だと感じています。
格差とは教師の取り組み具合の格差の事です。
補講や再テストを実施する学校と全くしない学校
進路情報を保護者に伝える通信を発酵する学校としない学校
定期テストの得点分布を出す学校と出さない学校・・・

優秀な先生は、優秀な先生との出会いの連鎖で生まれるなら、優秀な先生は1つの学校にかたまるのでしょうか?
転勤ありますけど、優秀な先生の転勤先とそうでない先生の転勤先には差があるのでしょうか?

ある教育サイトの掲示板で興味深い書き込みを見つけました。

>先生も熱血の人や事なかれ主義の人もいて、しっかり教育しようとする先生がいると周りの先生から止められます。 なぜなら、給料は変わらないからです。
>私立は実力主義のところも多く、同じ年でも年収が倍近く違ったりするので、やりがいが違います。 公立はやってもやらなくても給料は変わらないので、できるだけ仕事以外の時間を充実させたいと思っている先生が多いです。
>実際、添削や補習を自主的にやっていたら、周りの先生から「余計なことするな」と言われ、それを業務として追加するなら特別手当を出すような制度を作ってからでないと他の先生の迷惑になると組合からも注意されました。
>教師一人一人の問題では無く、学校としてここまでやるという方針で動かないと先生方は動けないのですがそれを決める校長が1,2年で交代するので、どこかの首相と同じで長期的な視点に立った行動ができない。

これは本当のことでしょうか?
posted by hhhat 2011/08/04 14:27 [ コメントを修正する ]
添削や補習を自主的にやっていたら、周りの先生から「余計なことするな」と言われ… このところはよい意味でも悪い意味でも真実かもしれません。余計なことをするなというより、言葉をかえれば教師の足並みを揃えるという意味が含まれるときがあります。つまり、「このクラスはやっているのになぜあのクラスはやっていないのか」と保護者に不安感や不信感を与えないように足並みを揃えるということです。

ですから我々は、智慧を出し合って協力しあって計画的に教育活動を進める必要があります。そういう意味では行き過ぎた事にはストップをかけるときがあります。

教育活動のリーダーである校長は最近は長く(6年くらい)居座る傾向にあります。教頭は2,3年が多いです。しかし、都道府県や学校の事情にもより様々な場合もあるようです。

公立学校の教師は公務員ですから、やはり安泰。悪いことをしない限り辞めさせられることはありません。

他の職業より恵まれていて切実感がないところはあると思います。しかし、私立でも安穏としている教師もいると聞きます。公立私立とも学校にもよるでしょう。

posted by 公立学校の真実at 2011/08/05 01:06 [ コメントを修正する ]
ご解答いただきありがとうございました。
おっしゃることは理解できます。
ただ、1つ疑問があります。

>公立私立とも学校にもよるでしょう。

私立の場合は先生の転勤も基本的にはないし(引き抜きや個人的な転職はありますが)学校カラーが長年にわたって踏襲される傾向が強いのですが、公立校は先生の移動が激しいですよね?
それなのに、手厚い学校とそうでない学校が生まれる背景はなんですか?
私の想像として、最初の書き込みにあげた「優秀な先生とそうでない先生の転勤校は分けられるのか?」という疑問にもあわせてお答えくださると嬉しいです。
posted by hhhat 2011/08/05 05:16 [ コメントを修正する ]
人事は基本的にそのような分け方はしません。ただ、下記のようになっています。

最初の人事は1月、最困難校しかも同和推進校から決まります。そこには最も必要な人材を配置します。だから、そこに優秀な人材がいきます。だからかどうかわかりませんが、最困難校の同和推進校から県の優秀教員が表彰される率が格段に高い。


その後、一般校の配置が徐々に決まるが、問題教師を固めるということはない。そうすると学校運営に支障を及ぼすからです。


同和校には教員が多く配置されます。だから補習など手厚い教育が施されます。一般校では、学生ボランティアなどで埋め合わせするのが精一杯です。そこに差が生まれると言えば生まれるでしょう。


posted by 公立学校の真実at 2011/08/06 02:58 [ コメントを修正する ]

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