公立学校の真実
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文科省の「教職員懲戒処分等状況調査」の結果による、精神性疾患のため休職した公立学校教員は、2003年度が3,194人、 2004年度が3,559人、2005年度が4,178人、2006年度が4,675人2008年度が5400人で、調査のたびに過去最高を更新している。
校長や教頭などの管理職を取り巻く状況も深刻だ。先の人事行政状況調査によると、管理職の希望降任制度を設けている59都道府県・政令指定都市教委の中で、校長や教頭から「希望降任」した者は、2003年度66人、2004年度81人、2005年度71人、2006年度84人、2007年度106人と増加傾向を見せている。また、2007年度の106人のうち70人が「教頭から教諭へ」の希望降任だった。校長と一般教員の間で板挟みになりやすい教頭の環境の厳しさがうかがわれる。
正式採用に至らなかった新採教員の人数、採用者全体に占める割合の推移を見ると、2003年度が111人(0.61%)、2004年度が191人(0.98%)、2005年度が209人(1.00%)、2006年度が295人(1.36%)、2007年度が301人(1.38%)で、人数、割合ともに年々増加している。2008年度は315人
増加の原因は、依願退職者が増えているためだが、そのなかで注目されるのが「病気」を理由に依願退職する新採教員の急増だ。「病気」を理由に依願退職した新採教員は、2003年度が10人、2004年度が61人、2005年度が65人、2006年度が84人と増え続け、ついに2008年度は103人となり100人を突破した。
99年から始まった一連の教育改革はグローバリズム経済の浸透によって、我が国の企業に盛んに導入された「成果主義」に似ている。我々教師はこの「成果主義」の落とし穴にハマった。
最近は発刊された高橋圭子著「calling」の中に「成果主義を一因とする様々な問題が明らかになってきています。たとえば、社員同士の絆が切れ、かつての日本企業にあった相互信頼や人を育てる力、総合力といった良さが大きく損なわれてきたことが指摘されています。その影響もあって、様々なストレスからくるうつ病など心の病が増加し、自殺者は11年続けて3万人を超え、日本のおよそ40人に1人が精神疾患を患い、その数は年を追うごとに増え続ける傾向にあるとされています。」と成果主義の落とし穴にハマった日本の姿が記されている。
さらに「いつの間にか私たちの内に浸透してゆくのは、成果・結果こそ“主”であり、人間はあくまでそのための“従”に過ぎないという見方です。」とある。今の教師の真相に当たる言葉だ。教師は学力向上を目指し、数値目標を掲げ努力し成果を評価し合う。教育の“主”は本来生徒である。しかし、「成果主義」の下では生徒は数値目標達成のための道具と化し、“従”となっている。
ところで、我々はもともと教師になろうとした理由は何であったのか。少なくとも私は、生徒の学力を何%上げるという目標達成のために教師になろうとしたのではない。様々なことを乗り越え、いきいきと輝いて生きていく生徒をつくるために教師になった。不登校の生徒、荒れる生徒、悩んでいる生徒の傍らを歩いていたいと思うのである。
新任教師たちはこの大変な教育の世界によくぞ飛び込んできたと思う。志ある青年たちと見る。しかし、今の学校にはその志を継続させる力はない。数値目標を立て、学力向上を唱える教師集団に、人間を育てる目線は生まれてこないからである。
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